出典:『Twenty Four Game Poems』収録、およびGizmet Game Poems「Game Poem 3」http://gamepoems.gizmet.com/2010/02/game-poem-3-three-old-men/
訳:django
このゲームは3人でプレイする。各プレイヤーは高齢者住宅地に居住する3人の老人――チャールズ、ピーターそしてマイケル――の誰かに扮する。この3人はそれぞれが、他の2人が死ねばいいと思っている。
(※訳注 高齢者住宅地:retirement community、高齢者/退職者用の大住宅地域。現在のアメリカのそれは、およそ55歳以上の“自立して元気に生活できる”人々を対象としており、日本人の考える養護・介護施設的なものとは異なっている)
最年長の者から自分がどの老人に扮し、描き出すのかを決める。チャールズは裕福で、殺意を自身に代わって実現する第三者に対価を支払うことを惜しまない。ピーターは重いステッキを手に、こいつで宿敵の頭蓋骨をガツンと陥没させるのを夢見ている。マイケルはポケットに直刃カミソリを忍ばせ、他の2人の喉にそれを走らせるのを妄想する。彼らはそのすべての生死の対決において、また、生死の対決においてのみ、チャールズはピーターに、ピーターはマイケルに、そしてマイケルはチャールズに勝利する。
チャールズ、ピーター、マイケルの3人は少年時代から付き合いがあり、多くの時間をともに過ごしてきた。そして現在、三老人は毎日、座り込んで不平を言い合っている。彼らは不満をぶつける――自身の健康、女性、天気、政治、地域の住人たち、税金、彼らの子供たち、他の人種や社会階級の人々へ。老人たちは互いに対してもケチをつけるが、彼らがそうするのは特に、他の2人が自分に対して過ちを犯したと感じる経験があったからである。
まず、チャールズを選んだプレイヤーが手始めに、他の2人のどちらかに、自分を悩ませ、または侮辱し、あるいは傷つけたことがあったと思い出させる。これは借りた金を返済しない、車で彼の義理の娘をひいた、ランチの時に最後の良い席を独り占めした等、いろいろなことがありえる。些細なことでも、重大なことでもかまわない。が、当人にとっては苦々しく、本当に不満なことでなくてはならない。論難された者は弁明するにせよ、しないにせよ、その後すぐに他の2人のどちらかを指名して、何ゆえに相手から気分を害されたのかを、先と同様に申し立てなくてはならない。そして非難された者は再び、他の誰かに対して不平を漏らし……と順に回し続ける。この相手への告発の度合いは、ことの重大性が前より増すようにしなくてはならない。ピーターの白いパンツにチャールズがグレープジュースをこぼしたことは、ピーターが戦地でドイツ軍と戦っている間に、マイケルが彼の最初の妻と寝ていたという事実よりは、客観的には悪くないかもしれない。が、とにかくパンツが大事だということもありうる。
そんなエスカレートする告発の円環が、軌道修正されるケースが2つある。
第一は、告発がいき過ぎていると感じられた時。もはや一線を超える他に道はないというほど深く傷つけられた際には、どのプレイヤーも立ち上がって「クソが! もうたくさんだ!」と怒鳴ることでそれを示せる。怒りを伝えたプレイヤーは、どのようにその恥知らずなクズ野郎の息の根を止めるつもりかを述べることで、生死の対決を開始する。攻撃された側はこれを聞き、上記の規則――マイケルはチャールズを、ピーターはマイケルを、チャールズはピーターを殺す――を思い出し、対決の結果を説明する。
こうして1人が死んだ後、残りの2人は次に何をすべきかを决定する前に、いったん小休止して顔を見合わせ、互いに考えなくてはならない。一方が他方と対決することを望んだら、決着の時である。対決の結果、ただ1人が生き残るとその者が勝者となり、幕が引かれ暗転する前に、対決後に何が起きたのかを1、2文で描写することができる。
第二は、告発の堂々巡りの中でプレイヤーが以下を選択した時である。告発された時に、他の2人のどちらかに非難の矛先を向けるのではなく、単純に何か他のものに対して文句を言うことにする。今年は去年よりも寒くて関節が痛む、生活保護を受けているという女についてのニュース記事を読んだか? 私の誕生日からひと月は経つが、あの性悪の孫はまだ電話もよこさない。このように告発に対して誰かを告発するのではなく、一般的な不満が挙げられた時には、他の2人は直前の告発に基づく反応(「ハッ! トランプで友人相手でもインチキするような、老いぼれたクズの家に誰が来るもんか!」)を返すか、あるいは同様に一般的な不満を口にすることでプレイを続行できる。これは先の不満に同調するかたちでも、まったく別の話題でも、どちらでもかまわない。
三老人が1人残らず他の誰も告発せず、一般的な不満を挙げたなら、ゲームは終了する。老人はひとりひとり順に遠くを見ては「そうだな」と告げなくてはならない。そして彼らは歩み去り、次の日にはまた再び集まる。