作者:Marc Majcher
出典:『Twenty Four Game
Poems』収録、およびGizmet Game Poems「Game
Poem 8」http://gamepoems.gizmet.com/2010/03/game-poem-8-the-calais-bunker/
訳:django
これは3人以上でプレイするゲームである。各人は、英仏間の最も狭い海、ドーバー海峡を臨む、仏側海岸を擁する港市カレーの警備・砲陣地に駐留するドイツ軍兵士に扮する。少なくとも1人のプレイヤーが機関銃に配置され、観測手――双眼鏡やその種の何かを用いる――1名、そして無線通信士1名と役割分担する。あなたたちはその役割と任務を熟知しており、職務を遂行するにあたっては有能で、全員が部署にふさわしい標準的な装備を帯びている。
兵士たちの1人は、第三帝国に対する裏切り者である。誰がそうなのかは決定せず、プレイヤーはそれについていつでも議論できる。揉め事があった際には、それに応じて行動、反応を示すが、自身の扮するキャラクターから逸脱した対処をしてはならない。
ゲームの開始は1944年6月初旬、占領下フランスの夏。陣の中はうんざりするほど暑い。軍服を着ているのははなはだ不快で、あなたたちは交代前の24時間にわたる警戒任務についている。時はしばし平穏に流れた。が、何か雲行きが怪しいと感じる。しかし、上官はそれが何ゆえであるのか、あなたたちに特に何も通達しない。
無線通信士がタイマーをスタートするか、皆がプレイ中の経過時間に注意しておく必要がある。設定やキャラクターを確立する――互いに名前と階級を告げ、任務についての議論や噂話を軽く語り合う――のに1分ほどかける。あなたたちは着任から少なくとも数ヶ月をともに過ごしており、世間話をするのになんら障害はない。各プレイヤーの発言は事実として受け入れ、そこからあなたのキャラクターと、キャラクター相互の関係性を構築し、発展させていく。
プレイ開始から1分30秒経過(1:30)、無線通信士は、担当区域に敵の動きあり、との報告を受けたことを告げる。あなたたちは警戒態勢を取り、さらなる通達を待つ。兵士は会話を続けることができるが、まだ何か行動を起こしてはならない。
開始から4分経過(4:00)、通信士は、自軍のレーダーがパ・ド・カレー沿岸に接近する連合軍の大艦隊を捕捉した、と発表する。その正確な規模は不明。陣の兵士たちは敵上陸部隊との交戦準備に入る。
あなたたちは会話を続け、状況に対して適切に行動、反応する。
開始から9分15秒経過(9:15)、通信士は振り向いて仲間たちに、敵攻勢に関する詳細が届き始めた、と報告する。そしてそこで、無線機は突如、沈黙する。簡単な点検で送受信機は完全におしゃかだとわかる。そして、もはや修理できないことも。
12分30秒経過(12:30)、送受信機は一時復旧し、無線通信士は、以下「 」内の語の空白(……)を補うかたちで文を作って伝える。「敵……な侵攻……」「……の卑劣な裏切り……」「……ドイ……の任務……」「…と交…」「……総員全力で……」、そして送受信機は火花を散らし、再び沈黙する。
14分経過(14:00)、観測手は、海岸沿いの自軍砲台が発砲を開始したことを告げる。あなたたちは遠くに大砲の低い轟音を聞き、いったん動きを止める。
15分経過(15:00)、機関銃座に配置されていた兵士の1人が、射程内の砂丘を登り、陣へと近づいてくる何かを確認する。
そして各プレイヤーが、自分のキャラクターの発言、あるいは行動を1つずつ述べて、ゲームは終了する。
(※訳注 このゲームは第二次世界大戦における連合軍の「ノルマンディー上陸作戦」が背景である。予想された上陸ポイントはカレー、ノルマンディー、ルントシュテット。熾烈な外交・諜報戦によって、ドイツは英仏海峡の最短部であるパ・ド・カレーこそ主目標と認識するよう仕向けられていた。史実では、実際の上陸地点はノルマンディーである。また、当時の占領下フランスに配備された兵には、東方大隊 Ost Battalion 所属のドイツ以東の国の出身者、占領区域からの強制徴募等で士気も戦闘力も低い者も多かった。作戦前夜、カレー方面には警告が出され、守備の第十五軍は警戒態勢に入っている。しかし、ノルマンディー方面の第七軍にはなんの通達もなかった。名高いBBCラジオによる『秋の歌』放送による上陸開始の暗号合図、これもドイツは傍受していたにもかかわらず、結局、第七軍に警戒司令が発せられることはなかったのである。このゲームでは、カレーに連合軍は上陸したように見える。本当だろうか?)
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