ゲームポエム、ロールプレイングポエムはそのプレイの焦点を、小さく範囲を限定した場面や雰囲気に絞ったミニマルなロールプレイングゲーム、ストーリーゲームの一種です。 本ブログではその個々のポエム(ルール)、およびプレイリポート等を掲載します。
2015年5月20日水曜日
【和訳】アーキペラゴ 第3版 Archipelago III
作者:Matthijs Holter
出典:Nørwegian Style「Archipelago III !」https://norwegianstyle.wordpress.com/2012/09/20/archipelago-iii/
訳:django
『アーキペラゴ』は、各プレイヤーが物語の主要なキャラクターをコントロールするストーリー/ロールプレイングゲームである。プレイヤーは手番に自身のキャラクターの物語の一部を語って演出し、他のプレイヤーたちとの対話を通してそれに影響を及ぼしつつ、物語を自ら選択した運命の分岐点へと導いていく。
このゲームはMatthijs Holter氏のデザインしたロールプレイングゲームの2015年5月現在の最新版(2012年9月公開)です。
プレイシステムのジャンルとしては、各参加者が自分の動かすキャラクター(登場人物)を持つRPGです。ただし、RPGでは一般的な司会進行役を務めるゲームマスターは必要としません。シナリオ等、事前の準備もほぼ不要で、数値を用いたルールもありません。GMレス(ゲームマスターなし)、PREPレス(事前準備なし)、フリーフォーム(数値等による細かなルールなし、即興でお話することが中心)のストーリーゲームと言えます。
ゲームで使う物語の舞台、世界も自由です。
作者は「ル=グインの『ゲド戦記』のようなストーリー」をプレイしたいと望み、この『アーキペラゴ』(※列島、という意味です)をデザインしましたが、キャラクターたちの活躍する世界はファンタジーでもSFでも、現代の地球のどこかでも、好きなものを提案できます。
実際に、このゲームのシステムに触発されたゲームデザイナーたちは、独自の物語世界とともにルール細部を追加・修正して新たなゲームを作り、販売したり公開したりもしています。
・『Last Train Out of Warsaw』:1939年、ドイツによる包囲前夜のワルシャワ
・『Love in the Time of Seið』:北欧神話の王国とそこに住む人々
(※上記はいずれもJason Morningstar氏による)
・『I Wanna Be a Stormtrooper』:スターウォーズ世界で遊ぶためのプレイセット(Anders Nygaard氏による)
・『Anarktica:Fate of Heroes』:スチームパンクな1899年の欧州と南極(※Richard Williams氏による)
冊子等の形にまとまったものだけでも上記のような例があり、各地で遊ばれたグループ毎の物語背景をリサーチしたら、とてつもないバリエーションとなることでしょう。『アーキペラゴ』本体も英語だけでなく、すでにフランス語、スペイン語に翻訳済です。
(※上記の4作品は2009年公開の『アーキペラゴ 第2版』準拠ですが、2版と3版のルール変更点はわずかな追加・削除が主なので問題なく参考になります。プレイセットである『I Wanna Be a Stormtrooper』を除いた3つは独立したゲームで固有のルールも多く含み、それ単体でプレイ可能な形になっています)
『アーキペラゴ』はサイコロ等で数値を扱うルールはない代わりに、フェイトカードとレゾリューションカードというカードをプレイに用います。元の英語版にはその画像データも収録されており、印刷して自作できるようになっていましたが、今回の和訳ではそのデータの画像作成は見送りました。
カードの内容はすべてルール冊子末尾にリストとして記述されており、その一つ一つに番号を振り、必要な時はその番号を書いた紙を無作為に1枚引く、というやり方で問題なくプレイ可能です。フェイトカードは12種、レゾリューションカードは16種あるので、その内容それぞれにリストの上から1~12、そして1~16と番号をつけ、情報カード等の紙に各番号を書いて12枚、16枚のカードデッキを即席で用意すればいいわけです。
ですが、プレイでの利便性だけでなく、ゲームの雰囲気においても「専用カードがある」というのは大事なことでもありますから、和訳カードのデータも作成し本ブログにアップすることを考えたいと思います。
ともあれ、ノルウェー発のフリーフォームなRPG『アーキペラゴ』は、国境を越えて注目されてきただけのことはある、さまざまな工夫や、この種のゲームを楽しむための示唆にあふれています。このゲームそのものがプレイ意欲をそそられる作品であると同時に、他のRPG等にも流用可能なテクニックも得られる良質なテキストです。
拙い訳ではありますが、どうぞ御覧ください。
※PDFファイルは→こちら
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