2015年2月11日水曜日

【創作】私たちは愛し合う

作者:齋藤路恵


何人もの人と愛を交わし合い、ときに相手を傷つけるゲームです。

用意するもの 3人以上の人
時間 10分 または 一生

この世界において「愛する」とは相手の喉をつかむことです。
この世界では「憎む」こともまた相手の喉をつかむ形で表現されます。

時間が始まったら、近くにいる人に話しかけてください。
誰でもかまいません。
遠くの人でもいいです。

相手に話しかけて、自分との共通点を3つ見つけてください。
とても簡単なはずです。
「目が二つ。鼻が一つ。口が一つ」
もう見つかりました!

見つかったら、愛し合う条件が整いました。
条件さえ揃えば人は自動的に愛を感じます。

ここからは声を発してはいけません。
お互いに手を伸ばして、相手の喉をつかむ準備をしてください。
相手の目を見て、視線だけで喉をつかむタイミングを計ってください。
つかんだら、5秒間、そのままでいてください。
あなたたちは愛し合いました。

あなたは愛を拒むこともできます。
「これは口ではないのです」
そう言ってもかまいません。
相手がどれほど望もうと、あなたはそれを拒絶することができます。

愛を交わしたらそのまま別れてください。
そして、別の人に話しかけ、愛を交わしてください。

互いが望むなら、愛の誓いをすることもできます。
愛の誓いはその場の全員を証人にして行われます。
その場の全員に声をかけ、全員が見守る中で愛を交わしてください。
これで、誓いは成立です。

愛は3人以上で交わすこともできます。
愛の誓いも同様です。
3人以上で交互に喉をつかみあってください。

誓いを立てた後もこれまでと同じように、他の人に話しかけてください。
(話しかけずに済ますことはできません。必ず他の人に話しかけてください)
ただし、共通点が見つかっても、相手の喉をつかむことはできません。
共通点が見つかったら、自分で自分の喉をつかんでください。……できれば、息が少し苦しくなるくらいの強さで。
相手は誓いを立てた者の手の上に手を重ねるか、喉をつかむこと自体をあきらめてください。
誓いを立てた者は他の者に喉を触らせてはいけません。

誓いは破ることができます。
誓いを破るときは自身の手を完全に下ろし、相手に一方的に喉を触らせてください。この時は少し長め、10秒くらい、相手に喉をつかませてください。

相手に喉をつかませたら、誓いを立てた相手に裏切りを告げにいきます。
誓いを立てた相手に、自分と誓い合った相手の相違点を3つ告げてください。
一方的にまくし立てるのでかまいません。
誓いは片側から一方的に破棄できます。

10分後、この世界は終了します。
最後のメッセージを交わします。
最後に愛を交わした相手のところに行ってください。
もしかしたら、相手のところには他の人も来ているかもしれません。
仕方ありません。
順番に相手に別れを告げてください。

もし、あなたにどうしても会いたい人がいる場合、最後の人を裏切って他の人のところに行ってもかまいません。

最後のメッセージは実際には相手に触れずに行います。
これまでと同じように相手の目を見つめてください。それから、喉をつかむ代わりに空をつかんでください。
そこに相手の喉があるかのように、ていねいに、リアルにつかんでください。

このときに首の骨を折ったり、喉を握りつぶしたりしてもかまいません。
あるいは、指で喉を優しく撫でたり、くすぐったりするのでもかまいません。
あなたが望むなら、相手の首を撫でたつもりの指を、そのまま自分の喉に持ってきてもよいでしょう。

全員が別れを告げたら、ゲームは終了です。
ゲームが始まる前の人間関係に戻ってください。

※PDFファイルは→こらち
※TEXTファイルは→こちら


  クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
齋藤 路恵 Michie SAITO 作『私たちは愛し合う』はクリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際 ライセンスで提供されています。